あえてフェミニストを批判してみる

フェミニスト批判はあまりしたくないんだわ。反差別というベクトルは圧倒的に正しいと思うし、フェミニストへの部分的な批判でもそれは往々にしてミソジニストに力を貸す結果となってしまうから。

ということで、ここにひっそり書いておくことにする。

今話題のColaboの仁藤夢乃氏。先に言っておくが、今のColabo騒動に関してはネトウヨやミソジニストの言いがかりであり、Colaboも仁藤氏も完全な被害者である。

ただ、過去のいくつかの彼女の言動には疑問を感じてもいる。

2021年の池内さおり落選にまつわるツイート

ジェンダー平等本気で掲げるなら、なんで池内さおりさん一位にしなかったの!と本気で思ってます」

「女たちの涙と汗の票が男性議員の当選に持っていかれて池内さんが落選した前回の選挙、本当に悔しかった。」

「性搾取や少女の人権取り上げる議員いなくなった」

共産党をボロクソ。これはどうかと思う。

議席数のジェンダー平等は重要課題にはちがいないが、数々の課題等を突き合わせた末の落としどころ(比例順位)は、それぞれを漸進させたものになるはず。

それを池内氏が比例上位にならず落選したからといって男性候補者を悪者扱いするかのような言い方をしたり、「ジェンダー平等などやる気がない」と断じたりするのは乱暴すぎるのではないか。


どこかのトークライブで、アルテイシア氏にその話を振られて返答する小池晃氏の様子にも「はぐらかして正面から答えない」と毒づくが、あのような雑な批判に対して具体性のある返答などできるわけがない。(あえて正面から答えたなら「それは暴論です」という回答になるだろう。)

ちなみに2021年衆議院選挙の東京選挙区の比例順位はこう。妥当だと思いますけどねえ。

[1]笠井亮 [2]宮本徹 [3]池内さおり [4]谷川智行 [5]坂井和歌子 [6]細野真理 [7]小堤東

キモいおじさん

仁藤氏はYouTubeで「キモいおじさん」と題した反差別動画をこれまで何度か流している。

内容はともかく、このネーミングには賛否ある。

私は是非は保留するが(←ずるい)正直いい気持ちはしない。だが「おじさんキモい」なら完全にアウトだが、「キモいおじさん」となると「キモくないおじさん」もいるという理屈になるから、アウトと断言するのは難しい。
(では「キモいおばさん」ならどうか、と考えかけたが、これは男女の非対称性という背景がある以上、フェアな対比ではないかも知れないのでやめておく。)

(↓このくだりはどうもよくない。まとまらない。どうしよう。)
これはトーンポリシングになってしまうかも知れないが、このネーミングでは男性視聴者はなかなか増えないのではと思わずにはいられない。私も馳浩のセクハラ問題を取り上げた回を観たことがあるのみである。うん、あれはキモい。


ジェンダー平等に対する意識の低い男性に怒りを持つのは当然だ。しかし彼女の場合、怒りを通り越して憎悪を強く感じる。いや、憎悪を持つこと自体も私は必ずしも否定しない。もっと正確に言うと、彼女は怒りに憎悪が加わるまでのハードルが低すぎやしないかと思う。マジョリティの私が言っていいことかどうかわからないが、まあ言ってしまおう。

私自身ジェンダー平等を願うひとりだが、そうはいっても因習に囚われて知らず知らずのうちに差別をしてしまうことはままあるだろうし、差別構造に胡坐をかいている面もあるにちがいない。

仁藤氏は、そうした男性のありように極めて冷淡に見える。だがしかしだ。ならば「差別をしない人間になりたいが、知らず知らずのうちにしてしまう人間」の振る舞いの“正解”ってなんだ? ひとつひとつ気付いて矯正して行く以外にないはずだ。


「差別主義者と対話はするな」は反差別のセオリーである。反差別の動きを潰したいだけの有象無象との対話は確かに無駄であろう。

しかしそうではない、むしろ善良な、かつ誤りに気付けば矯正する意思も持っている(と私には見える)人に対しても、仁藤氏は簡単に「コイツはダメ」と殆ど敵認定してしまっているように見える。たとえば米山隆一氏に対して。たとえば小池晃氏に対して。本当にそれでいいの?


マイノリティ側でありながら、女性が権利を獲得するための活動を続けている仁藤氏の行動力と心の強さは本当にすごいと思う。のだが、一連の乱雑な言動を見るにつけ、心情的にはあまり視界に入れたくはないというのが正直なところだ。せめて邪魔だけはしないように気ヲツケマス。

追記:北原みのりのコラム

イムリーなことに「キモい」について。
dot.asahi.com
なるほどねえ、である。
少なくとも、こと反差別においては、表現のきつさへの批判は慎重であるべきだろう。

追記2:モヤモヤ

自分のこの記事にモヤモヤしている。どうも「キモいおじさん」への抵抗感を書こうとしたが書けていない。「いい気持ちはしない」ってなんだ?

少なくとも「キモいおじさん」というワードに差別性はない(のではないか)と私は思っている。「だったら別にいいじゃん」と言い切ってしまっていいような気もするのだが……いやしかし……うだうだ……うだうだ……。